緊急事態発生! 緊急事態発生! リミッター解除!

パワーを出し過ぎると怪我するぜ、お嬢ちゃん!

人間とは実にフシギなもので、人命救助の場面や、生命の危険が高い場面など、緊急事態といわれる状況に置かれると、普段では到底考えられないようなパワーを発揮することがあるんだとか。
そう、これがいわゆる「火事場の馬鹿力」
火事や地震などの災害時に、寝たきりの人が自力で逃げたとか、重いタンスや金庫を持ち上げたとか……。

「そんなの、漫画の話じゃね?」と鼻で笑っちゃう人もいるかもしれませんが、
最近ではスポーツ科学や競技などの分野で、科学的に立証・実践されているんですってー!

国試まであと1週間ちょっと。受験生のみなさんにとっては、今がまさに緊急事態!?
こんな時こそ、火事場の馬鹿力を発揮して、本番まで突っ走りたいものですよねー。

ふんがっ


「火事場の馬鹿力」は本当に出るの?

私たちの身体には、たくさんの筋肉や骨が存在しますが、これらのパワーを100%発揮した状態で身体を動かし続けると、筋肉や骨にかなりの負担がかかったり、莫大なエネルギー量を消費したりするため、身体はボロボロになってしまいます(身体がいくらあっても足りない!)。

そのため、筋肉や骨の損傷を防ぐために、人間の脳にはあらかじめ安全装置(リミッターともいいます)がかけられており、意識的に発揮できるパワーに制限が設けられているんだとか。
つまり普段は、自分の意識の中で「これ以上はムリでしょ」と感じるところまでしかパワーが発揮できないようになっているのです(最大でも70~80%程度)。

ところが、緊急事態の場面に遭遇すると、脳の安全装置が解除され、アドレナリンがドドドーンと大放出!
「これ以上はムリでしょ」と感じる限界を超えて、本来備えられている潜在的なパワーが発揮されるようになるんです。
ちなみに、アドレナリンとは、副腎髄質から分泌されるホルモン(神経伝達物質)。
興奮した時に血液中に大放出され、身体のエネルギー代謝や運動能力を高めるんだよね。

火事場の馬鹿力を出すと人体はどうなる?

100%全開でパワーを発揮すると、筋肉や骨にはかなりの負担がかかります。
また、緊急事態の場面ではケガを負うことも十分ありえますよね。
火傷をしたり、骨折をしたり……、あぁ~想像するだけで痛そう(泣)。

ところが不思議なことに、火事場の馬鹿力が発揮されている間は、痛みを感じないことが多いらしいのです。

その理由は、βエンドルフィンという物質。
βエンドルフィンとは、脳の神経伝達物質のひとつで、気分の高まりや幸福感などをもたらすといわれています。
また、モルヒネの数倍もの鎮痛作用があることから「脳内麻薬」とも呼ばれているんだって。

火事場の馬鹿力が発揮されるような状況では、βエンドルフィンの分泌が高まっているので、ひどいケガをしていても痛みを感じることなく動くことができるのだそうです。

それでなくても、無我夢中で危険回避しようとしているのですから、痛いだの苦しいだの言っている場合じゃないんでしょうけどね……。

ただし、無事に危険回避して緊張から解き放たれ、βエンドルフィンの分泌が減少すると、「本当はひどい傷を負っていたのに、気付かなかったぞ! 自分」的な状況に陥り、あまりの痛みに気絶したり悶絶したりする人も多いんだとか。

βエンドルフィン


ちなみに、脳の安全装置を意識的に外すためには、大きな声を出したり(砲丸投げや円盤投げの選手、よく大声出してますよね)、心の中で「自分はできる!」とイメージトレーニングすると効果的とのこと。

国家試験は頭脳戦ですが、「自分は合格できる!」という自信をしっかり持って臨むことが大切。
これまでずっと受験勉強を積み重ねてきたみなさんなら大丈夫でしょう!
無事に合格を勝ち取れるよう、心からお祈りしています!

(文:真ノ宮ゆな/イラスト:matya)